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ありのままに、誠実に。地域と共に築く、次の建設業のかたち。

中村土建株式会社
代表取締役社長 渡邉 幸雄

更新日:2025年12月24日

栃木県宇都宮市出身。高校・大学でラグビーに打ち込み、卒業後は建設会社で現場経験を積む。2001年に家業である中村土建株式会社へ入社し、2015年に代表取締役社長に就任。創業以来の地域密着の姿勢を守りながら、PFI事業やDX・ICT施工など新たな分野に挑戦。「ありのままに、誠実に」を信条に、社員一人ひとりの声を大切にする経営を貫く。女性活躍や若手育成にも力を注ぎ、建設業のイメージを変える風土づくりを進めている。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

創業から77年。地域とともに歩み続けてきた道のり。

当社は1948年、私の祖父が創業しました。戦後間もないころ、祖父は東京の建設会社「中村組」で働いており、航空機メーカーの工場建設のため宇都宮へ赴任。そのまま当地に残り、「中村土建」として独立したのが始まりです。

以来77年、栃木県宇都宮市を拠点に地域密着で土木・建築工事を手がけてきました。2代目は私の父で、30歳の若さで社長を引き継ぎ、公共工事を中心に会社を大きく育てました。

昭和から平成にかけては、建設業界も大きな転換期を迎えていました。そんな時代にあっても父はいつも誠実に仕事を請け負い、地域の信頼を守り続けた人でした。

私自身は高校・大学とラグビーに打ち込み、その後、建設会社に就職。バブル崩壊を経て、同僚が次々と辞めていくなか、「家業に戻る時が来た」と感じて2001年に中村土建へ入社しました。

「父が築いた会社を守りながら、次の時代にどう発展させていくか」それが私の使命になりました。

建設業の「差別化」を模索。女性活躍と風通しのよい組織へ。

私が中村土建へ入社した当時、建設業はどの会社も似たような工事を行い、品質にも大きな差がありませんでした。

中小企業にとって、技術や商品で差別化するのは容易ではない。だからこそ、私は「人」の部分に活路を見いだしました。

当社では早くから「イメージアップ委員会」を立ち上げ、地域イベントへの協力や女性活躍の推進など、業界の印象を変える取り組みを進めてきました。

特に女性社員の働きやすい環境の整備や採用には力を入れています。現場に出る女性技術者もいますし、結婚や出産を経て復職した社員が設計や営繕部門といったポジションで活躍しています。

学歴に関係なく、長く働ける人を育てたいというのが私の考えです。現場での経験を重ねながら技術を磨いていく。その積み重ねが後に大きな力になります。

現場はまだ体力勝負の仕事もありますが、男女を問わず一人ひとりの強みを活かせるように役割を設計しています。全員が気兼ねなく意見を言える「ありのまま」の風土こそ、当社の誇りです。

DX・ICTの導入で「次世代の現場」をつくる。

建設業界ではいま、DXやICTの導入が急速に進んでいます。当社も県内では比較的早い段階から取り組んできました。ドローン測量や3Dモデルを活用した現場検証、安全管理のシミュレーションなどを導入し、少人数でも高品質な施工を可能にしています。

将来的には、最新技術を実際に体験・検証できるDXやICTに特化した新事業拠点「DX_LABO」設立も決まっています。LABOには社員が安全かつ効率的に学べる環境を整えるだけでなく、取引先や地元の技術者、学生にも開放して地域全体で建設技術を高めていくことを視野に入れています。

ただし、テクノロジーに頼りすぎるのは危険です。入力ミス一つで構造がずれることもあるからです。だからこそ、ベテランの知見と若手のデジタルスキルを両輪として育てていく必要があります。

若い社員はスマホやタブレットなどの新しいツールを使いこなすのが早く、柔軟に吸収していきます。一方で、ベテラン社員は経験をもとに構造の違和感を察知したり、現場の「勘どころ」をつかむ力がある。

この両者が力を合わせることで、ミスのない施工と安全性の高い現場が生まれています。現場から生まれる知恵と新しいテクノロジーが交わることで、未来の建設現場を支える新しい仕組みを創り出していきたいと考えています。

PFI事業への挑戦。地域の未来を支えるインフラをつくる。

公共工事の形も時代とともに変化しています。当社では、民間と行政が連携して施設を整備・運営するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業にも早期から取り組んできました。

初めて参加したのは宇都宮市の新斎場整備事業です。設計段階から地元企業として参画し、結果としてプロポーザルには敗れましたが、私にとって大きな転機になりました。

こうした挑戦は一度うまくいかなくても諦めずに続けることが大切です。最初のプロポーザルで敗れてから、「次は必ず取る」という想いで挑み続けてきました。

その結果、地元企業として受注できた案件もあります。地元企業が地域の施設を担うのは、何より誇らしい仕事だと感じています。

「ありのまま」の風土が生む、社員の主体性。

当社の社員は本当に「人がいい」とよく言われます。私自身、特別なことはしていません。大事にしているのは「ありのまま」という姿勢です。

私が経営において意識しているのは、社員一人ひとりが納得して動ける環境づくりです。トップダウンで指示するより、意見を聞きながら決めるほうが、みんなのモチベーションも上がります。

例えば、社員から「あの制度を見直してほしい」と直接話をされることがあります。そうした率直な意見が出ること自体、組織が健全に機能している証拠だと思います。

現場の声を拾い、可能な限り反映させること。それが私の役割です。昔のように「社長がすべてを決める」時代ではありません。私がいなくても回る会社をつくることが、次の経営者にバトンをつなぐための準備だと思っています。

成長痛を抱えながら、次の100年企業へ。

売上は現在、100億円規模に達しました。とはいえ、私にとって大切なのは数字そのものよりも、持続的に成長できる組織であることです。

規模が大きくなるほど、組織のスピード感が鈍くなったり、若手の育成に課題が出たりする、いわば「成長痛」のようなものが生じます。

売上拡大によって案件規模が大きくなると、若手の業務経験を積める機会が減ってしまうケースもあります。

大きな現場では担当業務が分業化され、全体を俯瞰する経験が積みにくい。だからこそ、あえて若手に小さな現場を任せ、早くからお客さまとの接点を持たせるようにしています。

私は地域の建設業として「人を育て、まちを支える」存在でありたい。地元のスポーツチーム支援や地域清掃なども、すべてその延長線上にあります。

宇都宮ブレックスのスポンサーとして協賛しているのも、地域の子どもたちに夢を見せたいからです。

これからも中村土建は、ありのままに誠実な仕事を重ね、地域の発展とともに歩んでいきます。

私たちがつくるのは建物だけではありません。地域の安心、社員の未来、そして次の世代が誇れる会社を築いていくこと。それが私の役目です。

編集後記

コンサルタント
大関 直樹

渡邉社長のお話から感じたのは、「地に足の着いた挑戦」を続ける経営姿勢でした。

DXやPFIといった新たな分野に果敢に挑みながらも、その根底には「地域と社員を大切にする」という不変の信念があります。

特に印象的だったのは、「ありのままが一番いい」という言葉。派手さよりも誠実さを重んじ、社員の声に耳を傾けながら組織を育てる姿勢が、まさに中村土建社の強さを支えています。

創業から77年。同社はこれからも地域とともに、次の100年へ向けて着実に歩み続けるはずです。

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