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世界市場で高シェアを獲得する医薬用ゴム栓のリーディングカンパニー。

株式会社大協精工
執行役員 経営管理部長 草間 竜太郎

更新日:2023年3月29日

麻布高校、東京大学経済学部を卒業し、1987年、三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。総務・人事・企業審査・法人営業などを経験。2016年、株式会社大協精工に入社。経営管理部長として総務・人事・経営企画・財務・購買・IT・サステナビリティ・リスク管理等を所管し、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

注射剤用の高品質なパッケージを製薬会社に供給し、医療現場を支える。

大協精工は医薬医療用パッケージの専業メーカーです。主力製品は注射剤用のゴム栓で、従業員は約900名、本社は栃木県の佐野市にあり、年間約10億個のゴム栓を佐野市にある工場で生産しています。売上高の約70%は海外向けで、米国のWest Pharmaceutical Services Inc.社と業務提携を行い、世界の製薬会社に供給しています。

大協・Westのアライアンスチームでのグローバルな売上は世界の過半のシェアを確保しております。また、国内でも、業界のトップ企業として圧倒的なシェアを確保しており、医療医薬用ゴム栓というニッチな事業分野ですが、国内・世界のリーディングカンパニーです。

製薬会社で製造された医薬品は世界の医療現場において、患者さんの治療のために使われますが、高機能な製剤も、容器がなければ医療現場に届けることができません。万が一にでも、国内・海外で圧倒的なシェアを有する当社がゴム栓を供給できないような事態が発生すれば、世界の製薬会社は医療の現場に製薬を供給することができなくなり、患者さんの生命にかかわる大混乱が起こります。

当社の供給責任、社会的責任は極めて重く、会社として常にその責任の重さを受け止めるとともに、我々の社会的な存在意義として、事業を行う上での大きな礎となっております。新型コロナウィルスのワクチン、治療薬の容器にも、当社のゴム栓が使用されており、この2年間、本当に多忙な日々が続きましたが、社会に貢献できたという充実感がありました。

今後の成長戦略。

世の中が激しく変化していく中、企業として現状に満足し、現状維持で十分と考えた瞬間に企業としての退化が始まります。足元の業績は極めて順調ですが、それに甘んじることなく、常に数年先のゴールを定め、それに向けて全社を挙げて取り組んでいくことが必要で、現在はアップグレードした中期事業計画の策定を進めています。

今後の成長戦略の一つの柱は、グローバルな医薬品マーケットの拡大をしっかり取り込んでいくことです。世界の医薬品市場は人口の増加とその地域の医療体制の高度化により、まだまだ拡大していくことが見込まれます。

具体的には、今後、中国・インドという巨大なマーケットの成長が見込まれ、長期的には中南米やアフリカも大きな成長マーケットになるでしょう。世界の大手製薬会社は、当然このような新興マーケットの拡大を見据えて様々な布石を打っていますが、我々も高い品質を武器に、これら製薬会社のビジネスパートナーとして市場の拡大を取り込んでいきたいと考えています。

また、先進国ではより高度な医療が進むことが期待されています。在宅医療に欠かせないデバイスやパーソナライズされた製剤など、これまで以上に高品質・高性能が要求されます。特に、デバイスとのIoT(AI)を利用したコネクティビティーが重要となってきます。こういった新しい市場においても、当社の強みを生かし、しっかりとしたポジションを確保していきたいと思います。

もう一つの成長戦略は製品の高付加価値化です。通常、製薬会社は製剤を充填する前に医薬品容器の滅菌処理を行っていますが、このような滅菌処理は製薬会社の大きな負担にもなっています。

当社では自社内に滅菌設備を完備し、出荷前に当社内で製品の滅菌処理を行い、製薬会社が製品受け入れ後にそのまま製剤の充填作業を行える製品を供給しています。社内では、このような社内滅菌済の製品を「HVP(ハイ・バリュー・プロダクト)」と呼んでいますが、顧客・当社とウィン・ウィンの関係の中で、このビジネスは大きく拡大していくと手ごたえを感じています。

世界地図を俯瞰して市場の拡大を取り込むとともに、顧客である製薬会社の業務分野を代行し、付加価値の高い製品を供給することによって、持続的な成長を実現していきたいと考えています。

社員に求めるものは「品格」。

顧客である世界の製薬会社は、超一流企業ばかりですが、これらの企業は我々のようなサプライヤーを「下請会社」としてではなく、対等なビジネスパートナーとして接してくれています。BCPやサステナビリティの取り組みなど、各社から学ぶことは多く、本当にありがたい関係ですが、超一流の企業から信頼に足るビジネスパートナーとして認めてもらうためには、我々自身も一流を目指していかないといけません。一流企業として認められるためには、最高品質の製品を供給することは勿論ですが、それに加え、高い倫理観、社会への貢献、透明性など、企業としての品格が備わっていることも必要と思います。

企業の品格というのは無形のもので、経営陣・社員一人一人の品格が企業の品格を形成しています。社員の皆さんには、常日頃より【1】率先して社会のルールを守ろう、【2】相手へのリスペクト、感謝、思いやり、気配り、とシンプルな2つの言葉で大協の一員として個々人の品格を高めようと話をしています。

我々のビジネスは顧客だけでなく、原材料メーカーさん、設備メーカーさん、地域社会、さらには日々、工場を掃除してくださる清掃業者さん、仕出し弁当の業者さんに至るまで、本当の多くの方々に支えていただいているので、社員全員から、そういった方々への感謝とリスペクトが自然に言葉に出てくるようになれば会社としても一流に近づくのではと感じています。

サステナビリティの取り組みについて。

欧米の製薬会社のサステナビリティへの意識は高く、ビジネスパートナーである当社にも同等の取り組みが要請されています。まさに、サステナビリティに真剣に取り組まない企業はグローバルのビジネスの舞台に立つことすら許されない時代が到来したことを実感させられます。

このような中、当社では2年前から本格的にサステナビリティ活動に取り組み始めました。具体的には、カーボンニュートラルでは2030年までに50%削減の目標を掲げ、工場の節電、火力発電の水力発電への切り替えなど、計画的なCO2削減を進めています。

また、毎年、利益の一定割合を地域貢献、社会貢献のためのファンドとして用意し、佐野市の医療施設や経済的支援が必要な方々の施設などに寄付を行っているほか、ウクライナやトルコ・シリア大地震の被災者への人道支援も行いました。

フランスにEcoVadis社という企業のサステナビリティ活動を外部評価する会社があり、世界の名だたる企業10万社が評価を受けています。このような取り組みにより、当社のサステナビリティ活動は、同社から全体の上位16%にあたるシルバーメダルの評価を頂いています。目標を全体の上位5%であるゴールドメダルに設定し、さらに改善を図っていくつもりです。

経営人材、専門人材… 多様な中途人材の力が当社の成長のドライバーに。

私は入社して8年目(2023年時点)になりますが、この8年間、海外事業の順調な拡大により大協精工の売上規模は約1.7倍となり、従業員も600名から900名にまで増加し、企業の成長を目の当たりにしてきました。

まさに、中堅企業から大企業に脱皮しようとしているタイミングで、「新しいことへの貪欲な挑戦」「経営のスピード感」「風通しのよさ」といったこれまでの大協の強み・良きDNAを残しつつ、大きな会社をマネジメントするのに相応しい経営の枠組みを構築しているところです。

会社として取り組むべき課題は沢山あります。まずは企業としての透明性を高め、企業としての信頼性をさらに高めていくことです。中長期的な信頼関係を構築するために会社の経営方針や向かうべき方向性を、社員を含めたステークホルダーにしっかり説明し、理解を求めていきたいと考えています。当社は非上場会社ですが、社会的責任の極めて重い企業ですので、当社の事業を支えてくれている方々に必要な情報は開示していきたいと思います。

また、この規模の会社になってくると、経営トップが現場の隅々にまで目を光らせることは難しく、権限委譲を進めるとともに、経営状況、経営リスクをモニタリングする仕組みも強化し、ガバナンス体制を強化していく必要があります。さらには、2年前に基盤システムを入れ替えましたが、新システムを活用し、データドリブンの経営を行う基盤を作っていかねばなりません。ビックデータ解析からさらなる経営改善がみられてくることを期待しています。

社員が企業の最大の資産ですので、既に構築した人材の計画的な育成プログラムをしっかり運用していくことも必要ですし、次世代の経営を見据えたサクセッションプランも具体化させているところです。成長途上の会社で、このように取り組むべきことは、まだまだたくさんありますので、一緒に取り組んでくれる有能で志の高い人材は、どんどん受け入れたいと思います。

一方、当社の最大の強みである品質についても、さらに高みを目指す必要があります。ものづくりと品質管理については、社内でも十分なノウハウがありますが、多様な経験を積んだ専門性の高い人材を受け入れ、当社のノウハウと融合し、昇華させることにより、さらにレベルの高い新しいものが生まれることを期待しています。

既に、当社では、経営管理、IT、営業、生産技術、品質保証、工場などにおいて多くの転職組が活躍してくれています。社風と栃木県民性から、真面目で温和な社員が多く、外から来た人材を温かく受け入れる土壌があります。チャレンジングで、やりがいのあるステージをご用意することをお約束しますので、当社の取り組みに共感していただける方に是非、当社で一緒に働いてほしいと思います。

編集後記

チーフコンサルタント
高山 綾美

すでに国内外とも圧倒的なシェアを確保していて、業績も右肩上がり、建屋は新しくクリーン、社員はいつどなたにお会いしても洗練されている。一見非の打ちどころがないようで、草間様はいつも目を輝かせながら「まだまだ」「もっともっと」とおっしゃいます。

今回のインタビューを通して、厳しい競争環境において生き残るだけではなく、持続的に成長していくカギは、その前向きでチャレンジングな姿勢なのだと思いました。このインタビューもまた、サステナビリティの取り組みの一環、そして未来の大協精工の仲間との出会いのためにご快諾いただきました。多くの方に届き、また響くものであると確信しています。

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