メディア事業やふるさと納税支援事業を展開。世界の主役となる地方都市を作る。
株式会社新朝プレス
代表取締役副社長 高嶋 久夫
1975年、栃木県小山市に生まれる。25歳のとき、とちぎニュービジネス協議会主催のコンテストで最優秀賞を受賞して起業。その後、同ビジネスプランで失敗を経験したことから、ビジネスの修業を積みに東京へ。ソフトウェア開発会社を経て、2005年に楽天株式会社に入社。システム開発やマーケティング、営業管理、予算管理などを経験後、社内選抜を勝ち抜いて海外事業担当に着任。フランスやドイツ、イギリス、スペインなどの事業買収を担当する。 2012年に同社を退職し、栃木にUターン。『月刊タウン情報もんみや』を発行する株式会社新朝プレスに入社。2016年より現職。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
地方都市の魅力を、独自の視点で開発。
私たち新朝プレスは、「世界の主役になれる地域づくり」をミッションとしています。 新朝プレスの始まりは、1977年に創刊した『月刊タウン情報もんみや』。以来、栃木の暮らしを楽しくするさまざまな情報を発信し続けて、栃木県内で流通している月刊情報誌の販売部数ナンバーワンに成長しました。
その後『もんみや』を基盤として、当社の事業は徐々に拡大してきました。現在の事業セグメントは(1)Webコンテンツやアプリ制作、SNS運用支援を行う「デジタルプロデュース」、(2)パンフレットやガイドブックの企画、イベント企画などを行う「コミュニケーションプロデュース」、そして(3)これらを顧客企業のビジネス支援に応用する「ビジネスプロデュース」です。
具体的には、2013年に県産品の販売を行うECサイト「もんみや通販」を開設しました。また、2015年にはふるさと納税支援事業を開始、これまでの8年間で支援した自治体は160を超えました。現在は、売上の半分以上を、もんみや通販とふるさと納税支援事業が占めています。
これらの事業にはいずれも『もんみや』を通して培ってきた「大切なことを伝える」ノウハウが活かされています。成長に伴い、宇都宮市旭の本社オフィスに加えて、2022年以降に宇都宮市駒生町と京都府亀岡市、北海道紋別市、茨城県守谷市にもオフィスを立ち上げました。
また、これまで栃木県内では「もんみやさん」として親しまれてきましたが、今後の県外事業の拡がりをにらみ、「新朝プレス」の名をしっかり伝えるために、コーポレートブランドも刷新しました。事業エリアは拡大しても、「独自の視点で地方都市の面白みを見出し、その魅力を最大化したい」という、『もんみや』創刊の頃からの意志は変わりません。ブランディングはその姿勢を明確化するためのものでもあります。
時代の変化に応じて、事業を再構築していく。
『月刊タウン情報もんみや』は、40数年にわたって栃木県内の人々に愛され続けてきた媒体ですが、「紙」であることに固執しているわけではありません。とはいえ、紙をWebやアプリに置き換えればいいという単純な話でもないのです。
実際、私たちもWebやアプリにチャレンジしてきました。紙や映像、Web、SNSなどさまざまな手段があるなかで、どれをどのように活用し、また連携させていくか、再構築しなければなりません。
また、事業のフィールドについても捉え直しが必要です。これまでは「栃木」というドメインにこだわってやってきましたが、「北関東」というくくり、あるいは「全国の地方都市」というくくりもできます。実際、ふるさと納税などを考えたときには、地方都市を一つのサイトにまとめて情報発信するほうが伝わりやすくなります。
地方都市が求めるものやメディアの状況は、刻々と変わっています。前例を踏襲するだけでは変化に対応できません。ただ、ひとつだけ間違いないことは、どんな時代であろうと「情報」は決して不要にならない、ということです。
紙かWebかアプリか、といったことが本質なのではありません。地方都市を発展させるため、暮らしを豊かにするための情報に私たちがどのように関わり、どんな事業・サービスに落とし込んでいくか。そこが重要なのです。ちなみに、この「事業の再構築」「フィールドの捉え直し」を一緒にやってくれる方がいたら、ぜひ仲間に迎え入れたいです。
ノウハウの蓄積が、ふるさと納税支援事業を発展させた。
ふるさと納税支援事業は、現在当社の重要な柱となっています。これまで支援した自治体は160を超えており、年間300億以上の取り扱い寄付額は、全国トップクラスの実績を誇ります。
この事業を発展させることができたのは、「地域の特色を活かした事業者開発・返礼品開発のノウハウ」「寄付者をリピートにつなげるお客さま対応力」「返礼品の魅力を伝えるデザイン・表現力」「企画提案から商品発送までの一貫体制」のすべてが、当社に備わっていたからです。これらはすべて、既存事業によって培われたものです。
どのような商品が寄付者の共感を呼ぶかといった目利き力や、人々に魅力を伝える表現力は、『もんみや』をはじめとするメディア事業で磨いてきました。また、寄付者からの連絡に丁寧に応えることで信頼を形成する力や、商品発送までコントロールする力は、「もんみや通販」によって鍛えられました。
寄付金額で全国第1位を誇る北海道紋別市のふるさと納税支援を受託していることは、当社のサービスがお客さまから評価されてきたことの証拠のひとつであると思います。今度は、このふるさと納税支援事業で得たノウハウや自治体との信頼関係を、次の事業に応用するフェーズに入っています。
例えば、北海道紋別市であれば、流氷の季節に外国人観光客を誘致するとか、海外向け通販事業が合うかもしれません。また、茨城県守谷市であれば、つくばエクスプレスの沿線人口が増加しているので、子供向けイベントの企画が喜ばれるかもしれません。逆に、京都府亀岡市で実践したふるさと納税支援のノウハウを、栃木に持ち帰ってきて実践するといったこともあり得るでしょう。
改めて、重要なのは地方都市の課題、地方都市が求めるものは何かを把握することです。解決策として提示できるノウハウは、当社の中に蓄積されています。
100億円分の信頼を得られる会社を目指す。
私が入社してからの10年間で、当社の売上は6倍に拡大しました。さらにこの先の10年間で、売上100億円を達成したいと考えています。
私は、2012年に新朝プレスに入社したときからずっと、「売上」にこだわってきました。とはいっても、決して傲慢な考え方ではありません。売上は「お客さまから任される仕事の総和」です。つまり、私たちは地方都市を元気にする仕事を100億円分任されるくらいの会社になりたいのです。
アフリカに「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」ということわざがあります。以前の私は「早く行きたい」タイプでした。実際、「売上100億円」だけを意識するのであれば、少人数でやればいいと思います。
しかし、繰り返しになりますが、私がやりたいことは「100億円分の地方都市を元気にする仕事」です。そういう社会をつくりたいと思ったら、少人数では限界があります。多くの仲間の力が必要で、みんなで実現しなければ意味がないと、いつからか考えるようになりました。
もうひとつ、私が社員に口をすっぱくして言っていることが、「逆算思考」です。人類はロケットを開発したから月に行けたのではなく、まず「月に行こう」という目的があったからロケットを開発できたのです。大切なのは目的であり、そこから逆算して考えると、やるべきことはおのずと見えてきます。
当社に興味を持ってくれる新たな人材に対しても、同じことを伝えたいですね。売上100億円は大きな目標ですが、解決の道筋が見えないほど荒唐無稽なものではありません。その目標に対して、「付いていきます」ではなくて、「一緒にやっていきたい」「自分にやらせてほしい」と、事業や組織を引っ張ってくれる方々と出会いたいです。