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売上は目的ではない。OEM日本一を目指す、ひざつき製菓の成長論。

ひざつき製菓株式会社
専務取締役 兼 営業本部長 膝附 宥太

更新日:2026年3月18日

1990年生まれ。大学卒業後、飲食店向けの卸売会社でルート営業を経験。2015年にひざつき製菓株式会社に入社。営業部門にて量販店を中心とした販路開拓に携わり、主力ブランドの売上拡大や新規チャネルの開発、OEM事業の推進、総務、物流を担う。老舗米菓メーカーとしての技術とこだわりを生かしながら、新商品開発や他業種とのコラボレーションなど、攻めの戦略を展開。専務取締役 兼 営業本部長に就任後は、採用を中心とした人事領域も兼任している。2026年4月に4代目として事業承継を控える。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

会社存続の危機からもう一度立ち上がるまで。

当社は米菓・スナック菓子を中心とした菓子メーカーで、全国のコンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットに商品を供給しています。

自社ブランド商品もありますが、現在の事業の柱はOEM。小売業のプライベートブランドを製造する「裏側」を強みにしてきました。売上の約半分はOEMが占めています。

会社の歴史を振り返ると、決して順風満帆ではありません。創業当初はリヤカーで手作りのおせんべいを売り歩くところから始まり、看板商品がヒットしたことで一度は成長しました。

しかし、その成功体験に頼りすぎた結果、営業努力や商品開発が止まり、40年ほど前には赤字に転落。会社売却を考えるほど追い込まれた時期もあったと聞いています。

転機になったのは、外部に助けを求めたことでした。身売りを検討する中で、大手メーカーのOEMを担うようになり、技術や考え方を徹底的に学びました。

実はこのOEM受託が始まった背景には、当社の看板商品「城壁」の存在があります。ひび割れ模様を生み出す独自の技術が評価され、「この技術を生かしたい」と声をかけてもらったそうです。

そこから徐々に体質が変わり、約25年前には「えびせんべい」が、さらに約15年前には「黒胡椒せんべい」がヒットし、ようやく黒字体質へと転じました。

売上3倍を生んだ「速さ」と「柔軟さ」。

ここ10年ほどで、ひざつき製菓の売上は約3倍に伸びています。2026年3月期の着地見込みは約44億円。2030年に70億円、2035年には100億円を目指しています。

この成長を支えているのは、シンプルに言えば「小売業がやりたいことに、最速で応える力」です。OEMの場合、通常は企画から製造・出荷まで4~6カ月かかることも少なくありませんが、当社は商品によっては最短3週間で立ち上げたこともあります。

このスピード感が評価され、「とりあえず、ひざつきに聞いてみよう」と言っていただけるケースが増えてきました。このスピードを実現できている背景には、営業と製造の距離の近さがあります。

両部門が分断されているメーカーも少なくないのですが、当社は営業側も工場のライン状況やキャパシティ、最適なロットまである程度把握しているので、商談の場で「この条件ならできます」と提案できる。これがスピードにつながり、結果として信頼にもつながっています。

新商品の開発数も、以前は年間10数品でしたが、今では100品以上。米菓やスナックだけではなく、グミ、チョコ、ポテトチップス、パスタスナックなど、さまざまな商品に挑戦しています。最近では「ひざつきに聞けば、何とかなる」と言われることも増えてきました。

「情報を開く」ことで組織が動き出した。

こうした体制が整ってきたのは、ここ10年くらいのことです。営業の情報をできるだけ開示し、製造側の事情もできる限り理解する。お互いの状況を理解したうえで、共通の目標に向かって動けるようにしてきました。

実際、過去に受注が急増したときは、営業メンバーも夕方以降に製造現場に入り、一緒に作業したことがあります。

そのときに感じたのは、「なぜ作るのか」が伝わっているかどうかで、現場の負担感はまったく変わるということでした。理由が分かれば、人は納得して動ける。これはすごく大きいと感じました。

この経験をきっかけに、社内報の発行を始めました。現場を含めた全社に向けて、「今どんな案件が動いているのか」「なぜこの数量が必要なのか」といった背景まで共有することで、同じ目標に向かって動ける組織をつくりたいと考えたからです。

今では一部の人が全部を抱える会社ではなく、多くの社員が考えて動く会社になっています。情報をオープン化したことで、成長できる余地が一気に広がった感覚があります。

OEM日本一を掲げた理由と、やらないと決めたこと。

1年ほど前、「日本一のOEM菓子メーカーを目指す」と明文化しました。派手な自社ブランドを持つ方が分かりやすいのは事実です。でも、当社が市場から強く求められているのは、小売業のオリジナル商品を支える存在です。

価格競争に巻き込まれないため、オリジナル色を出すために、小売各社がPBを強化している流れの中、最も価値を発揮できる場所で勝ち切る。それが、ひざつき製菓の社会的な存在意義だと考えています。

一方で、明確に「やらない」と決めていることがあります。それは、売上を目的にすること、安売りをすることです。

売上を伸ばすだけなら、正直簡単です。でも、利益が伴わなければ会社は長く持たない。過去に潰れかけた経験があるからこそ、この考えは今も根幹にあります。

売上は目的ではなく、あくまで手段。人への投資、設備投資、社員の待遇改善。そのために必要だから、売上を伸ばすのです。

人への投資が、次の成長をつくる。

今、一番の課題は「人」です。3年後、5年後を見据え、どんな人材を迎え、どう育てるか。これから事業承継を進めるにあたっては、現場のことをもっと深く知りたいと考えています。

忙しくても、毎日5分でも10分でも工場に足を運び、顔を合わせて会話する。そうした積み重ねが、組織の空気をつくると思っています。

ちなみに、現場へ入りやすくするために、上からさっと羽織れる白衣を新しく発注したところです(笑)。

採用に関しては、私自身がすべての窓口に立っています。やる気のある人には、他社ではなかなかできない経験を用意できます。

営業部長候補、製造の役職者候補、店舗マネージャー候補。裁量も大きいですし、成果を出せば、給与もきちんと上げていく。

ひざつき製菓は、外から見る以上に安定しています。そのうえで、まだまだ成長の余地がある。

お菓子をゼロからつくり、世の中に出し、評価される。そのプロセスを本気で楽しめる人にとっては、これ以上ない環境だと思っています。

編集後記

チーフコンサルタント
高山 綾美

ひざつき製菓は子どもの頃から大好きなお菓子メーカーで、栃木市に住む親戚のおじさんが遊びに来るたびにお土産として買ってきてくれた記憶があります。栃木県民にとって、ひざつき製菓はそんなふうに日常に溶け込んだ存在なのではないでしょうか。

そんな馴染み深い会社の経営者としてお話を伺った宥太さんは、同世代の経営者として心から尊敬できる方でした。

印象的だったのは、まっすぐで偽りがなく、言葉や姿勢に一切のブレがないこと。何を目指し、どこで勝ち切るのか。そのビジョンが明確で戦略も戦術も具体的でした。

「日本一のOEM菓子メーカーを目指す」という言葉には、勢いだけではなく、積み重ねてきた現場の強さと覚悟が感じられます。これから宥太さんが進めていく挑戦から、ますます目が離せません。

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