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売上は目的ではない。OEM日本一を目指す、ひざつき製菓の成長論。
ひざつき製菓株式会社
専務取締役 兼 営業本部長 膝附 宥太
1990年生まれ。大学卒業後、飲食店向けの卸売会社でルート営業を経験。2015年にひざつき製菓株式会社に入社。営業部門にて量販店を中心とした販路開拓に携わり、主力ブランドの売上拡大や新規チャネルの開発、OEM事業の推進、総務、物流を担う。老舗米菓メーカーとしての技術とこだわりを生かしながら、新商品開発や他業種とのコラボレーションなど、攻めの戦略を展開。専務取締役 兼 営業本部長に就任後は、採用を中心とした人事領域も兼任している。2026年4月に4代目として事業承継を控える。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
会社存続の危機からもう一度立ち上がるまで。

当社は米菓・スナック菓子を中心とした菓子メーカーで、全国のコンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケットに商品を供給しています。
自社ブランド商品もありますが、現在の事業の柱はOEM。小売業のプライベートブランドを製造する「裏側」を強みにしてきました。売上の約半分はOEMが占めています。
会社の歴史を振り返ると、決して順風満帆ではありません。創業当初はリヤカーで手作りのおせんべいを売り歩くところから始まり、看板商品がヒットしたことで一度は成長しました。
しかし、その成功体験に頼りすぎた結果、営業努力や商品開発が止まり、40年ほど前には赤字に転落。会社売却を考えるほど追い込まれた時期もあったと聞いています。
転機になったのは、外部に助けを求めたことでした。身売りを検討する中で、大手メーカーのOEMを担うようになり、技術や考え方を徹底的に学びました。
実はこのOEM受託が始まった背景には、当社の看板商品「城壁」の存在があります。ひび割れ模様を生み出す独自の技術が評価され、「この技術を生かしたい」と声をかけてもらったそうです。
そこから徐々に体質が変わり、約25年前には「えびせんべい」が、さらに約15年前には「黒胡椒せんべい」がヒットし、ようやく黒字体質へと転じました。
売上3倍を生んだ「速さ」と「柔軟さ」。
ここ10年ほどで、ひざつき製菓の売上は約3倍に伸びています。2026年3月期の着地見込みは約44億円。2030年に70億円、2035年には100億円を目指しています。
この成長を支えているのは、シンプルに言えば「小売業がやりたいことに、最速で応える力」です。OEMの場合、通常は企画から製造・出荷まで4~6カ月かかることも少なくありませんが、当社は商品によっては最短3週間で立ち上げたこともあります。
このスピード感が評価され、「とりあえず、ひざつきに聞いてみよう」と言っていただけるケースが増えてきました。このスピードを実現できている背景には、営業と製造の距離の近さがあります。
両部門が分断されているメーカーも少なくないのですが、当社は営業側も工場のライン状況やキャパシティ、最適なロットまである程度把握しているので、商談の場で「この条件ならできます」と提案できる。これがスピードにつながり、結果として信頼にもつながっています。
新商品の開発数も、以前は年間10数品でしたが、今では100品以上。米菓やスナックだけではなく、グミ、チョコ、ポテトチップス、パスタスナックなど、さまざまな商品に挑戦しています。最近では「ひざつきに聞けば、何とかなる」と言われることも増えてきました。
「情報を開く」ことで組織が動き出した。

こうした体制が整ってきたのは、ここ10年くらいのことです。営業の情報をできるだけ開示し、製造側の事情もできる限り理解する。お互いの状況を理解したうえで、共通の目標に向かって動けるようにしてきました。
実際、過去に受注が急増したときは、営業メンバーも夕方以降に製造現場に入り、一緒に作業したことがあります。
そのときに感じたのは、「なぜ作るのか」が伝わっているかどうかで、現場の負担感はまったく変わるということでした。理由が分かれば、人は納得して動ける。これはすごく大きいと感じました。
この経験をきっかけに、社内報の発行を始めました。現場を含めた全社に向けて、「今どんな案件が動いているのか」「なぜこの数量が必要なのか」といった背景まで共有することで、同じ目標に向かって動ける組織をつくりたいと考えたからです。
今では一部の人が全部を抱える会社ではなく、多くの社員が考えて動く会社になっています。情報をオープン化したことで、成長できる余地が一気に広がった感覚があります。
OEM日本一を掲げた理由と、やらないと決めたこと。
1年ほど前、「日本一のOEM菓子メーカーを目指す」と明文化しました。派手な自社ブランドを持つ方が分かりやすいのは事実です。でも、当社が市場から強く求められているのは、小売業のオリジナル商品を支える存在です。
価格競争に巻き込まれないため、オリジナル色を出すために、小売各社がPBを強化している流れの中、最も価値を発揮できる場所で勝ち切る。それが、ひざつき製菓の社会的な存在意義だと考えています。
一方で、明確に「やらない」と決めていることがあります。それは、売上を目的にすること、安売りをすることです。
売上を伸ばすだけなら、正直簡単です。でも、利益が伴わなければ会社は長く持たない。過去に潰れかけた経験があるからこそ、この考えは今も根幹にあります。
売上は目的ではなく、あくまで手段。人への投資、設備投資、社員の待遇改善。そのために必要だから、売上を伸ばすのです。
人への投資が、次の成長をつくる。

今、一番の課題は「人」です。3年後、5年後を見据え、どんな人材を迎え、どう育てるか。これから事業承継を進めるにあたっては、現場のことをもっと深く知りたいと考えています。
忙しくても、毎日5分でも10分でも工場に足を運び、顔を合わせて会話する。そうした積み重ねが、組織の空気をつくると思っています。
ちなみに、現場へ入りやすくするために、上からさっと羽織れる白衣を新しく発注したところです(笑)。
採用に関しては、私自身がすべての窓口に立っています。やる気のある人には、他社ではなかなかできない経験を用意できます。
営業部長候補、製造の役職者候補、店舗マネージャー候補。裁量も大きいですし、成果を出せば、給与もきちんと上げていく。
ひざつき製菓は、外から見る以上に安定しています。そのうえで、まだまだ成長の余地がある。
お菓子をゼロからつくり、世の中に出し、評価される。そのプロセスを本気で楽しめる人にとっては、これ以上ない環境だと思っています。