2023.02.21
昭和から平成、そして令和へ|栃木のいちご事情
こんにちは。リージョナルキャリア栃木コンサルタントの鎌田です。
私の住む北国札幌でもスーパーにいちごが並ぶ季節になりました。
いちごといえば栃木、栃木といえばいちごのイメージがあり、栃木が誇る「とちおとめ」はどのスーパーに行っても堂々と正面に鎮座している姿を見かけます。

※引用:JA全農とちぎ(最終閲覧日:2023年2月21日)
しかし、昭和生まれ(バブル世代)の私にとっては、いちごといえば「女峰(にょほう)」であり、栃木県の存在を知ったのも「女峰」がきっかけであったように思います。
最近めっきり見かけなくなりましたが、栃木のスーパーでは売っているのでしょうか?
「女峰 買える?」
本来であれば、最近流行の「ChatGPT」に聞いて最速で答えを得たかったのですが、あいにく無料会員登録は利用者多数で申し込みが締め切られておりましたので、ネットで最近のいちご事情を調べてみました。
調べてみると、最近見かけなくなった女峰の陰に、栃木のいちご栽培の歴史があることがわかりました。
「女峰」がいちご王国栃木を築いた
栃木県で大々的にいちごの生産が始められたのは戦後で、米栽培の裏作として農家の所得を維持・向上できる新たな作物として栽培が始まったそうです。1963年には収穫量日本一となり、さらに栽培方法の改善や品種改良などが進む中で1985年に栃木県オリジナル品種である女峰が誕生しました。
いちごの良し悪しは味や色・形で評価されることが多いように思いますが、当時この女峰が画期的だったのは、収穫時期を早め、クリスマスの時期に合わせて出荷できるようになったことだそうです。これにより価格も上昇し、出荷量も爆発的に伸び、最盛期には県内の99%、全国の50%の作付面積を持ち、1992年には栃木県の販売額は200億円を突破しました。
子供の頃の記憶と重ね合わせてみると、クリスマスケーキを予約して買うようになった(≒大量に生産できるようになった)のは中学生の頃だったので、まさに1980年代。いちごと生クリームのクリスマスケーキは定番でした。もう少し幼い頃の記憶では、クリスマスケーキといえばバタークリーム?だったような気がするので、いちご農家さんの努力のおかげで、クリスマスにおいしい生クリームのケーキが食べられるようになったと言えるかもしれません。
また、スーパーでは1~2月がシーズンのいちごですが、当時、我が家の庭のいちごは5~6月頃が食べ時でした。ずっと「時期遅れのいちご」と思っていましたが、実は品種改良が進む以前のいちごは5~6月頃が食べ頃とのことで、時期遅れではなかったと知りました。
「とちおとめ」は女峰の後継者
さらなる品種改良の結果、1996年に「とちおとめ」が登場。とちおとめは女峰と比べて大粒で酸味が少ないことや生産量が増加したことから、とちおとめへの世代交代が一気に進み、2000年には県内の作付面積は94%、出荷額は250億円を突破、名実ともに後継者となりました。
最近のいちごの勢力図はどうでしょうか。
近所のスーパー2件のいちご売り場を見てみたところ、どちらの売り場もとちおとめが一番の面積を占めています。その周囲には西のいちご大国福岡の「あまおう」、そのほかにも「やよいひめ」(群馬)、「紅ほっぺ」(静岡)、ちょっと高級品の装いで「スカイベリー」(栃木)などの品種を見つけました。予想以上にいろいろな産地のいちごが並んでいました。そのような中でも、栃木県は1968年以降50年以上いちごの生産量日本一を維持しており、50年目となった2018年には栃木県庁に記念碑が建てられたそうです。

※引用:下野新聞「なぜ栃木県は「いちご王国」になれたのか 女峰、とちおとめ、そしてとちあいかへ」最終閲覧日:2023年2月21日)
そして「とちあいか」の時代へ
そして、時代は「とちあいか」へ。2020年に名前が決まった新品種です。とちあいかはとちおとめに比べて成長が早く、同じ面積で作った場合の収穫量がとちおとめの約1.3倍となるそうで、栃木県は、2027年産までに県全体の生産量に占めるとちあいかの割合を1割から8割に増やす計画を進めているそうです。遠くない将来、スーパーの棚からとちおとめが消えとちあいかに代わる日が来るのかもしれません。
結局「女峰」は買えるのか?
さて、「女峰 買える?」についての答えですが、ネット検索では通信販売で普通に購入できることがわかりました。
しかし、栃木産のものは見つけられず、香川県産で小豆島町のふるさと納税の返礼品として取り扱われているのを発見しました。現在、女峰の生産量は全品種の1%以下となっており、「幻の品種となりつつある希少ないちご」として高級品の位置づけとなっているようです。
「いちご王国栃木」には歴史とプライドがある
栃木のいちご栽培の歴史を少しだけ覗いてみましたが、戦後栃木にいちご栽培を根付かせた先人の熱意があり、その後の生産者、農業試験所、JA、企業が一丸となっての努力なしには、今の姿はなかったのだろうと思います。
今回いちごをテーマにしたのは、単純に「女峰は今も買えるのだろうか」という疑問からでしたが、実は弊社が採用をお手伝いしているクライアント企業にも、いちごやトマトなどの「栽培園芸農業」を支援している企業があります。
「いちご王国栃木」の歴史とプライドを背負う仕事!よろしければ、ご参考になさってください。
- 株式会社誠和(施設園芸機器の営業職)
- 株式会社Delphy Japan(施設園芸農業コンサルタント)
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