地域情報ブログ

企業2023.02.27

ヤオコーの進撃!出店戦略から見る宇都宮市

こんにちは。リージョナルキャリア栃木のコンサルタント、高山です。

2月9日、ヤオコー(本社:埼玉県川越市)は、JR宇都宮駅西口前の商業施設「トナリエ宇都宮」地下に「ヤオコートナリエ宇都宮店」をオープンしました。

オープン当日は開店前に約100人の行列ができる盛り上がりだったようです。

ヤオコーは、栃木県内では「トナリエ宇都宮店」も含めてまだ6店舗しか出店されていないとのことで、県民にはまだあまり馴染みのないスーパーマーケットかもしれません。

個人的には、学生時代に一人暮らしをしていたアパートの近くにヤオコーがあり、当時の彼氏と大学の帰りに夕飯の買い物に立ち寄ったり、はたまた夕飯を作るのが面倒な日にはお惣菜コーナーにお世話になったりと、とても思い出深いスーパーマーケットです。

さて、新規出店といえば、これまでの「コストコ」や「スターバックスコーヒー」同様、その戦略が気になるところ。今回も「ヤオコーの出店戦略から見る宇都宮市」と題して、宇都宮市を地理的観点から深掘りします。

<参考>

2022.04.14「なぜ壬生町にコストコが!? 出店条件から見る壬生町のポテンシャル

2023.01.12「スターバックスが壬生町にやってきた!栃木への出店戦略を考察

「ヤオコー」とは

株式会社ヤオコーは、埼玉県を中心に関東圏でスーパーマーケット182店舗を展開する企業です。明治23年創業(昭和32年会社設立)、埼玉県川越市に本社を構えています。

2022年3月期の売上高は4,465億円、経常利益は214億円、33期連続増収増益を達成する(いずれも単体)など、絶好調の企業です。

なお栃木県では、「トナリエ宇都宮店」のほか、足利市に3店舗、佐野市と野木町にそれぞれ1店舗ずつ出店されています。

yaoko_1.jpg

(画像出典:株式会社ヤオコーHP/会社情報

TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』が主催する「あなたにとって一番スーパーなスーパー」を決める国民投票『スーパー総選挙』の第4回(2022年)に、24,844票中4,712票を獲得して2位となるなど、展開エリアが限られるなかでも圧倒的な知名度と根強い人気を誇っていることがわかります。

※参照:TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る/第4回スーパー総選挙」

それから、ヤオコーといえば、お惣菜とお弁当! 聞くところによると500以上もの種類があるのだとか。なお筆者的おすすめは、インストアベーカリーで提供しているピザとフォカッチャ、ポキ丼、バーニャカウダです!

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(筆者撮影「ハッピーピザ(左はテリマヨチキン、右はトマト&パンチェッタ)」)

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(筆者撮影「オリーブ香るフォカッチャ」)

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(筆者撮影「やみつきポキ丼」)

トナリエ宇都宮店について

「トナリエ宇都宮」はJR宇都宮駅西口徒歩1分のショッピングセンターです。しばらく宇都宮を離れている方には「ララスクエア宇都宮」と言ったほうが伝わるでしょうか。

ここ数年はテナントの撤退が相次いで、ちょっぴり寂しい感じがしていましたが、そんな中でのヤオコーのオープンは、かつての賑わいが戻る気配を感じさせて、嬉しくなります。

「ヤオコートナリエ宇都宮店」の営業時間は、午前9時~午後9時45分となっています。

ヤオコーの出店戦略

ここからが本題、「なぜヤオコーが宇都宮に!?」を検証していきます。

同社の統合報告書や社長インタビューを遡ってみたところ、出店戦略について言及されているのを発見しました。

『YAOKO REPORT 2020』より-出店戦略「ドーナツエリアへの出店」

主に都心から20kmから40kmのドーナツエリアにドミナントを形成し出店する方針です。出店地域は関東圏ですが、現在は、より人口が集中する地域である埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県を最重要エリアと位置付けています。出店にあたっては、店舗を中心に半径1kmから3kmを商圏とし、堅実な投資回収計画に基づき、あらゆるネットワークを駆使して出店判断をしています。地主の方には、当社の経営方針、運営方針、戦略などをご理解いただき、長期的な信頼関係構築に努めております。さらにドーナツエリアの内側の都心マーケットへの進出のため、都市型小型の実験をしています。八百幸成城店では、品揃えや店舗オペレーションを構築し、都市型モデルを検証、道筋がついてきました。

※引用:ヤオコーグループ 統合報告書「YAOKO REPORT 2020」(最終閲覧日:2023年2月27日)

『YAOKO REPORT 2020』より-営業統括本部長インタビュー

その他の取り組みでは、極小商圏フォーマットの店舗展開を進めていきます。これは、従来の店舗が面積600坪前後を標準とし、年商20億円、経常利益率4%以上を出店可能の目処としていたのに対し、年商12~13億円でも利益を生む400坪前後の店舗の開発に取り組んでいるものです。生鮮売場を縮小しつつ、デリカ売場は標準店舗と同規模を維持し、プロセスセンターでの精肉加工や発注作業のデジタル化によって業務効率を改善し、利益を確保します。2021年度の第1号店に続き、2022年度は第2号店をオープンさせ、将来的には300坪前後での出店を可能とすることで、商圏間の隙間を囲い込みたいと考えています。

※引用:ヤオコーグループ 統合報告書「YAOKO REPORT 2022」(最終閲覧日:2023年2月27日)

『リテールガイド』より-川野澄人社長インタビュー

――23年2月に栃木県宇都宮市に店舗面積700坪クラスのトナリエ宇都宮店を出店予定だ。いままでの出店エリアからすると飛び地になる。

川野 確かにわれわれにとっては少し飛び地への出店になるが、いままでも群馬県中之条町や神奈川県の三浦市、小田原市にお店を出したりしている。(埼玉県川越市の)サポートセンター(本部)からの距離でいうと、決して飛び抜けて遠いということではない。

当然、社内ではわれわれの商圏に含めるのかどうかの議論はあったが、当社は一都六県を中心にマーケットシェアを上げて行こうということを大方針としているので、特に栃木県、群馬県、茨城県等についても、人口の多いところをきちっと狙いながら出店をしていければと考えている。

宇都宮は1店舗少し離れる形になるので、既存のお店とつなぐような(ドミナント)出店を考えていきたい。

駅前の立地で、いままでヤオコーがないエリアの出店になるので、やはり、遠くからもご来店いただけるような、強い核の売場を散りばめていく計画を立てている。非常に所得層も高いエリアと認識しているし、当然のことながら、当社の強みとしてディスカウントというよりはしっかりと商品の魅力でお客さまにご来店いただけるようなお店にしたいと思っている。

(商圏内には)ヨークベニマルさんがいらっしゃるわけだが、われわれも思い切って出してみようということで決めた。力を入れて取り組みたいと思っている。


――来期はヤオコー単体としては5店の出店計画となっている。建築コストの上昇など逆風が吹くが、店舗開発の状況は。

川野 建築費が非常に上がっていて、投資採算が厳しくなってくることは間違いなくある。一方で建築費の上昇はどの業界も一緒なので、いままでわれわれと用地の確保で競合していたマンション業者、あるいは物流業者との競争については、これから少しゆるやかになるのかなと思っている。

特に物流業者は非常に高い価格で用地を押さえることをされていたが、いままでの床面積の増加等を考えても少しペースが落ちてくるのかなと思う。そういう意味では用地の確保の余地は多少出てくると思っている。

また、居抜きの物件等も積極的に検討していきたいと思っている。われわれは出店が成長の原動力なので、出店のペースをできるだけ落とさずに行きたい。

※引用:リテールガイド:ザ・トップマネジメント 2023年の視座と戦略 ヤオコー 川野澄人社長(最終閲覧日:2023年2月27日)

まとめると、ヤオコーの出店戦略は以下のようになります。

  • ① ドミナント戦略(都心から20kmから40kmのドーナツエリアへの集中出店)
  • ② より人口が集中する地域を最重要エリアとする
  • ③ ドーナツエリアの内側へのマーケット進出(都市型モデルの実現)
  • ④ マイクロマーケットへのマイクロ店舗展開(商圏間の隙間の囲い込み)
  • ⑤ 一都六県を中心にマーケットシェアを上げる
  • ⑥ 居抜き物件も積極的に検討する

ヤオコー出店戦略から見る宇都宮市の今

では、前出のヤオコーの出店戦略から「② より人口が集中する地域を最重要エリアとする」について深掘りしていきましょう。

宇都宮市には、栃木県の総人口1,905,170人のうち、4分の1以上となる514,859人が住んでいます。また世帯数は234,838戸、1世帯あたりの人員は2.19人と、いわゆる「家族」の数が多いエリアです。(いずれも2023年1月1日時点)

※参照:栃木県毎月人口推計月報

なお、そんな家族にも優しい栃木県の暮らしについては、以下でも詳しくご紹介していますのでご覧ください。

栃木県の特色 - U・Iターン転職ならリージョナルキャリア栃木
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ほかにも宇都宮市の「人口」にまつわるさまざまなデータがありましたので、いくつかご紹介させていただきます。

|昼夜間人口比率

前回のブログでも触れましたが、エリアマーケティングの切り口のひとつに昼夜間人口比率というものがあります。

常住人口(=そのエリアに住んでいる人口)100人あたりの昼間人口(=通勤や通学による移動人口の増減を反映した人口)の割合のことで、これが100を超えているときは流入超過、100を下回っているときは流出超過となります。

たとえば都道府県別でいえば、東京都が最も高く119.2%、次いで大阪府が104.4%、埼玉県が最も低く87.6%です。(2020年10月1日時点)

※参照:栃木県令和2年国勢調査「従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果 栃木県の概要

宇都宮市は101.8%、つまり1日における人口の流動は大きくなく、ざっくりと言えば「昼も夜も人がいる」わけです。

昼間は子育て世帯の主婦の方やお年寄りの方、夜間は仕事帰りのビジネスパーソンなど、幅広いターゲットが想定されるため、マーチャンダイジングにも影響が出ているかもしれません。

|中心市街地来街者の傾向

宇都宮商工会議所が主催した「令和元(2019)年度 商店街来街者実態調査」というものがあります。これは、2019年7月28日(日)と7月29日(月)の10:00~19:00、JR宇都宮駅東西自由通路および旧宇都宮パルコ前にて、高校生以上の中心市街地来街者を対象に行った調査です。

この調査からは、以下のようなことがわかります。

  • ▶「ヤオコートナリエ宇都宮店」付近は、平日も休日も変わらない通行量がある。
  • ▶来街目的のひとつが「買い物」であり、なかでも食料品を買い求める来街者は曜日を問わず安定している。
  • ▶買い物目的での来街者の多くは宇都宮市内居住者であり、特に食料品の購入は自宅や職場から近い利便性が優先される。

※参考:令和元(2019)年度 商店街来街者実態調査 結果報告書(最終閲覧日:2023年2月27日)

なお、少々古いものにはなりますが、栃木県産業労働観光部が公表したデータによると、居住する市町村で買い物をした割合を指す「地元購買率」について、宇都宮市は栃木県内の市町村で最も高い97.2%を誇っています。

※参考:平成26年度 地域購買動向調査報告書の概要(最終閲覧日:2023年2月27日)

先述の「買い物目的での来街者の多くは宇都宮市内居住者」であることが、定量的にも証明されています。

まとめ

宇都宮市はヤオコーの出店戦略ど真ん中ではありませんが、ヤオコーの川野社長は「トナリエ宇都宮店」について、「(北関東の)モデル店にしたい」と話されています。

※参照:2023年2月9日下野新聞「宇都宮駅西口『トナリエ』のヤオコー開業 スーパー入居12年ぶり」(最終閲覧日:2023年2月27日)

ドミナント戦略において、「トナリエ宇都宮店」の動向によっては、これを中心として栃木県内にヤオコーの店舗がさらに増えていくかもしれませんね。今後の展開も楽しみです。

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この記事を書いた人

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